霊泉寺「不開門〔あかずのもん〕」脇にあるこのケヤキは、目の高さの幹約9.4m、樹の高さ約35m、枝の広がりは南北約30m、東西約27mの、当地方で指折りの大木です。不開門はその建築様式から16世紀中頃(室町時代)の建築と推定されていますが、この大ケヤキは不開門建設以前からあったものとも伝えられ、樹齢は数百年をこえるものと思われます。
丸子温泉郷の中の霊泉寺温泉の入り口を守るシンボルとなっていましたが、枯死により倒木したため、現在はありません。
不開門〔あかずのもん〕(伝説)
昔、霊泉寺に仏国禅師という偉い坊さんが住んでいました。ある日、中国から慶書記〔けいしょき〕という絵かきがやってきて竜の絵をかきました。それは何枚もの板をつなぎ合わせたもので本堂に並べておきました。ところが竜は絵からぬけ出し、大雨を降らせたり、大風を吹かせたりして村の人を困らせました。そこでお坊さんは胸の板を一枚はずし門をかたく閉じてしまいました。そしてお盆とお正月の十六日だけ開けました。それからは竜もおとなしくなり村の人は安心して暮らすことができました。
何年かたってお寺が火事になりました。胸の板をはずされた竜は逃げることができないで悲しい声を出して鳴いていると、西の空から真っ黒な雲があらわれました。竜はそれにのって天に上っていきました。