別所神社本殿は、別所温泉の北方、常楽寺に隣接し、塩田平をはじめ遠く浅間連峰が望める小高い丘の上にあります。
社名は、古くから「熊野社」といわれていました。社伝によると、紀州(和歌山県)の熊野本宮大社から分祀〔ぶんし〕されたといわれています。以来ずっと熊野社でしたが、明治11年(1878)に別所神社に改められました。
建物は「一間社隅木入春日造〔いっけんしゃすみきいりかすがづくり〕」といいます。屋根は瓦葺です。
数ある棟札の内、天明八年(1788)のものが今の建物に相当するものと考えられています。大工棟梁は末野庄兵衛安定とあり、上田房山に住み、塩野神社本殿・拝殿をはじめ、安楽寺の山門など社寺建築に多くの業績を残した末野氏の一族です。
本殿は18世紀の神社本殿として、規模も大きく、建築様式や、建物を飾る彫刻も華〔はな〕やかで、建築物として優れ、当初の形式がよく残され、文化財として保存価値の高いものです。
なお本殿の背面に小さな祠〔ほこら〕が三基祀〔まつ〕られています。これは神社入口の鳥居の額〔がく〕に「本朝縁結大神〔ほんちょうえんむすびおおかみ〕」と掲〔かか〕げられているように、縁結びの神を祀ったもので、本殿よりおくれて祀られたものと考えられますが、民俗資料として価値があり、本殿と共に貴重なものです。