上田盆地の北方にそびえる太郎山は、市民のだれからも愛されている山です。仰ぎ見るとどっしりとしていて、人々をやさしく見守ってくれているような姿をしているので、この山を神様として崇〔あが〕めまつる風習は、古くからあったものと考えられます。
現在の本殿は、覆屋〔おおいや〕の中に保存されているので、目にはふれることができませんが、棟札によると「明治六年(1873)三月十五日再建 大工棟梁〔とうりょう〕山崎正是、金井為久、彫工棟梁竹内八十吉〔やそきち〕」など、大勢の人々によって、つくられたことがわかります。
この本殿の特にすぐれた点は、名工のほまれ高い竹内八十吉(「荒神宮本殿」参照)の華麗〔かれい〕な彫刻で美しく飾られていることです。
本殿の四面は所せましと刻まれた竜・つる・かめ、ほうおう・獅子・中国の物語など、八十吉の得意とする彫り物で、飾られています。