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信州大学繊維学部講堂

種別 :国登録 建造物
指定日:平成10.9.2
所在地:常田3-15-1
年代 :昭和4年

解説

信州大学繊維学部の前身は上田蚕糸専門学校で、明治44年(1911)四月に開校しました。当初は養蚕科と製糸科で発足し、大正8年(1919)に絹糸紡績科を設置しました。

講堂は、昭和4年(1929)に完成し、設計は文部省建築課、施工は桝屋組(現在は柳屋建設株式会社)でした。 講堂の形式は、木造二階建、切妻造、瓦棒〔かわらぼう〕鉄板葺、下見板〔したみいた〕張りの建物で、正面に切妻破風を二段重ね、三角の張り出し窓を付け特徴ある外観構成となっています。様式的には木造ゴシック系の建物ですが、入口の持ち送りや三角の張り出し窓、時計回りの意匠には、直線を生かしたセセッションの意識がみられます。セセッションは過去様式からの分離を意識的に行った新様式で、アールヌーヴォーが曲線的であるのに対して直線的で、実用性を重視している様式です。松本市の旧松本高等学校の校舎(大正9年)も表現は異なりますが同じ様式で建てられています。

講堂の内部は、中央を吹き抜けとし、前後の二階に控室、側面側にギャラリーをとっています。窓は二連の上げ下げ窓です。内部仕上げをみると、床は寄木〔よせぎ〕張り、壁は漆喰〔しっくい〕大壁で腰板張り、天井は中央吹き抜け部分では折上格天井〔おりあげごうてんじょう〕としています。

特徴は、全体ではセセッションの様式がみられることです。また、ペアの意匠が多いのも特徴で、正面入口の脇の柱・持ち送り、内部ギャラリーの化粧桁、格天井のフレームの繰り形などにみられます。この講堂で他に例をみない特徴は、蚕糸のシンボルである桑・繭・蛾〔が〕が各所に意匠として付けられている点です。入口の天井の換気口には繭と蛾、ステージの柱には桑、アーチの縁飾りには蛾と桑、演台には蛾と繭、脇台には桑が使われています。いかにも蚕糸専門学校の建物という表現といえましょう。

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