愛染カツラの木
北向観音の正面石段西側(右側)に大きなカツラの木があります。「影向〔ようごう〕の桂〔かつら〕」(神仏が一時姿を現したカツラ)といわれる霊木〔れいぼく〕で、一般には「愛染カツラ」といわれ大切に保存されています。 「常楽寺の火坑〔かこう〕から出現した観音が、かつらの木にとどまり、『わが像をつくって、北に向けて安置しなさい。すべての人を救ってあげます。』といわれた。」という北向観音の縁起に出てくるカツラの木とされています。
美しい景観になりますが、これがめしべの色(花の写真参照)です。やがて萌黄色〔もえぎいろ〕になって、北向観音堂にも春の訪れを告げてくれます。
愛染カツラの花
カツラは谷川ぞいや渓流〔けいりゅう〕ぞいの地下水の豊富な土地を好む植物で、この地も湯川ぞいであって、カツラの生育には極めて好適地であったので、こんなにすくすく大きく育ちました。
「愛染カツラ」の名称は、参道の反対側にある愛染堂、そして第一回直木賞〔なおきしょう〕を受賞した故川口松太郎(1899 - 1985)の『愛染かつら』(日活映画)の因縁〔いんねん〕によるといわれています。そのため今でも縁結〔えんむす〕びの霊木〔れいぼく〕として多くの老若男女から親しまれています。
大きな根本
国指定の多くは根本から叢生〔そうせい〕して何本かの幹に分かれていますが、当カツラは目通り幹囲が5.8mの太さで一本の大木に育っています。