鴻の巣
(鴻の巣川を基準にした崖の最高の高さ51.8m
崖の東西方向の幅190m余り)
久保の集落から久保峠へ向かって進むと、中ほどに「鴻の巣口」というバスの停留所があります。ここを左に曲がって薄暗い松林の中の道を500mほど行くと目の前が急に明るく開けて黄白色の大きい崖〔がけ〕が現れます。ここが鴻の巣です。上田市には、これほど大きい堆積岩〔たいせきがん〕の崖は他にありません。
鴻の巣の崖を作っている岩石は、ほとんどが礫岩〔れきがん〕です。礫〔れき〕とは小石のことで、このあたりが海底だった今から1400万年ほど前、陸地から運ばれてきた小石や砂が積もった地層で、地質学では第三紀中新世〔ちゅうしんせい〕の青木層とよんでいます。
けわしい「鴻の巣」の地形
崖を遠くから眺めると、白っぽい岩肌に鉄分がしみこんでできた茶色のしま模様が見えます。崖をとり巻くように生えている赤松の緑と茶色のしま模様の岩肌の白さが調和して大変に素晴らしい景色です。近寄って小石を手にとってみると、上田市の近くでは見ることができない赤や緑、白や黒などのすべすべした石ばかりで、遠い所から運ばれてきたことを教えてくれます。
地元の人々は、鴻の巣の崖は見るたびに景色が変わっているといいます。礫岩は大変もろいので、雨が降った時や雪どけの季節などには少しずつくずれ落ちて崖の姿を変えているからです。
槍〔やり〕のように先のとがったけわしい地形のところは、礫岩にしみこんだ鉄分の固い部分が雨や風に耐えている様子をあらわしています。