虚空蔵堂〔こくぞうどう〕は平安時代に創建されたと伝えられる天台宗の古刹〔こさつ〕(古い寺)・法住寺の信仰の中心となっています。堂名の虚空蔵が部落名になっているほど地域信仰の中心となってきました。
屋根は入母屋造〔いりもやづくり〕こけら葺〔ぶき〕で、棟〔むね〕の両側にはいかつい鬼の面、鬼板がついています。建物は正面に柱が4本、側面に柱が5本あり、奥行の長い長方形となっているのは、仏様の安置されている内陣〔ないじん〕に参詣〔さんけい〕者の参拝する外陣〔げじん〕がついているためで、内陣と外陣の間は格子戸〔こうしど〕でしきられています。
堂全体は和様でできていますが、屋根の合わさっているところから下方に下っている彫刻(懸魚〔げぎょ〕)などに見られるように禅宗様のところも少しあります。すっきりとした美しい建物で、室町時代中頃に造られたものと考えられています。国の重要文化財に指定された程大切な建物で、もちろん依田窪〔よだくぼ〕地方最古の建物です。
お堂のなかにある厨子〔ずし〕もお堂と同時代に造られたものと推定されています。方一間入母屋造〔ほういっけんいりもやづくり〕という禅宗様式独特の方式で造られており、とても精巧なもので、虚空蔵堂とあわせて国の重要文化財に指定されています。厨子の中には虚空蔵菩薩が安置されています。
私たちは自然から一切のものをいただき生きています。自然、大きくいえば宇宙ですが、仏教ではこの宇宙を「空〔くう〕」といい、その内部空間を「虚空」といっています。この虚空は、私たちにとって宝庫です。このカギをしっかりにぎっている仏を虚空蔵菩薩といっています。広大な福徳・知慧をもっている仏様です。