市内紺屋町の八幡社に掲げられている一対の大きな絵馬〔えま〕で江戸時代前期の貞享〔じょうきょう〕五年(1688)に奉納されたものです。滝を背にして岩の上に止まる黒鷹〔たか〕と、松の枝に止まる白鷹が一羽描かれています。また、地〔じ〕には一面に金箔が貼られているという豪華な作品です。
裏面に墨で「雪丹末葉〔まつよう〕長谷川等栄信舟筆」と書かれており、作者は長谷川等伯の起こした長谷川派の画家であったことが分かります。また、この長谷川等栄は当時の上田藩主仙石家の記録から、同家お抱〔かか〕えの絵師であったことも分かっています。
これらの点と大変立派な作りであること等からみて、この絵馬は当時の上田藩主仙石政明〔まさあきら〕が奉納したものと考えて間違いないでしょう。紺屋町八幡社は上田城の鬼門〔きもん〕の方角(北東)にあり、上田城の守り神として代々の城主に篤〔あつ〕く敬われた神社でした。その建て替え・修理などは藩の経費でまかなわれていますし、政明自身もしばしばここに参拝しています。
また、これは制作年代のはっきりしているものとしては、市内に伝わる最古の絵馬ではないかとみられる貴重な資料です。
八幡社への奉納絵馬 2面ともに、高さ102cm・幅160cm。
「奉掛御宝前(御宝前に掛け奉る)貞享五辰年五月吉辰」と書かれている。