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木造阿弥陀如来立像(芳泉寺)

種別 :市指定 彫刻
指定日:昭和49・6・5
所在地:諏訪部

解説

本像の光背裏に朱書で二行に「奉造立御光南無阿弥陀佛信心施主原浄貞」「干時慶長十七子壬年三月十三日常福寺第六世安誉上人」と書かれています。また台座の框座〔かまちざ〕裏にも、同じ意味の朱書があります。このことから、本像の光背及び台座の傷みが進んだので、原浄貞が私財を投じて修復したことがわかります。浄貞とは、真田家に仕えた原半兵衛正貞のことです。


本像は、檜材を用いた寄木造(用材を組み合わせてつくること)で、頭部と体部は前後に二材を矧寄〔はぎよ〕せ、中をくり抜いています。腕部、両手首、両足先、着衣の袖部などは別材を矧寄せています。


如来の姿は、頭部の肉髻〔にっけい〕(頭頂の盛り上げた髪)はやや低く肉髻珠〔にっけいしゅ〕(肉髻の正面につけた水晶の玉)をつけています。地髪〔じはつ〕(肉髻の下部)の鉢がよく張り、螺髪〔らほつ〕は小粒でよく整っています。髪際〔はっさい〕(額の髪の生え際)は波形で中央が垂れさがっています。顔は白毫相〔びゃくごうそう〕(眉間に水晶の玉をつけた顔のこと)で、下膨〔しもぶく〕れの顔立ちの中に、大きく弧を描くように刻まれた眉、半眼に開いた切れ長の水晶の玉眼、引きしまった口もとなど、やや厳しい表情です。


頸部は三道(頸部に刻まれた三本の筋目)を刻み、体部は通肩〔つうけん〕(両肩に懸かること)の法衣〔ほうえ〕(納衣〔のうえ〕ともいう)裳〔も〕(裙〔くん〕ともいう、袴〔はかま〕のような着衣)を着け、左手は垂下し、右手は臂〔ひじ〕を曲げ、来迎印(阿弥陀如来の印相〉を結ぶ通例の姿で蓮華座(蓮の花の台座)に立っています。着衣の襞〔ひだ〕(筋目)は、浅く整っていますがやや様式化されています。また彩色は、頭部は現状は黒灰色、肉身部は金泥彩(後補)で、着衣には漆箔〔しっぱく〕(黒漆地に金箔を貼る)の痕跡が確認されます。


光背(仏の放つ光明を形どつた装飾)は船形で、上部に飛天光を透彫〔すかしぼ〕りし、下部に飛天と蓮華文を配する仕上げはみごとです。また蓮弁九段魚鱗葺の踏割〔ふみわり〕蓮華(両足に分けてつくられた蓮華座)を最上段に、敷茄子〔しきなす〕、華板〔けばん〕、下敷茄子など十四段に重ねた台座 は豪華です。また框座〔かまちぎ〕の側面に刻まれている格狭間〔こうざま〕(お椀のような曲線で刻まれた模様)の装飾も入念な仕上げです。総高187.0cm、像高97.0cm、光背高134.0cm、台座高90.0cmの、伸びやかで調和のとれた如来の姿は、室町時代の仏像彫刻の特色を示しています。