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木造狛犬

種別 :市指定 有形文化財 彫刻
指定日:昭和56年3月6日
所在地:浦野
年代 :

解説

阿形〔あぎょう〕・吽形〔うんぎょう〕の二体の狛犬は、寺院の仁王門に祀られる金剛力士像と同じように、鬼神、悪霊〔あくりょう〕を追い払うために、神前に座し祭神を護る役目を果たしています。


この習わしはすでに平安時代から行われ、鎌倉時代に盛んとなって、たくさんの狛犬が造顕されるようになりました。通例では、狛犬は忿怒〔ふんぬ〕の顔つきで、鬼神、悪霊をにらみつける表情を示しますが、特に鎌倉時代の狛犬は、忿怒(怒りを示す表情)の顔つきが激しく、胸を張り、前脚を力強く踏張〔ふんば〕る蹲鋸〔そんきょ〕(前足を立て後足ですわる姿勢)の姿態に特徴がみられます。


それに対し、室町時代に下がると、忿怒の表情の激しさは影をひそめ、その姿態は形式化され、穏やかなつくりとなります。鬣〔たてがみ〕(額から肩にかけての長い毛)などの表現は様式化されておとなしくなります。


馬脊神社の、阿形、吽形の二体の狛犬は、檜〔ひのき〕材を用いた一木造で、中をくり抜いていません。像高は阿形が30.0cm、吽形は29.8cmです。体部は白土の下地に彩色がほどこされていますが、そのほとんどは剥落〔はくらく〕し、わずかにその痕跡をとどめるのみでほとんどが素地となっています。


また両像とも頭部から顔にかけて磨耗〔まもう〕や損傷がみられ、阿形は、眼部、鼻部、口部など、顔全体の損傷がはげしく元の表情を損〔そこ〕ねています。また両像とも前脚の膝下、後脚の足首先を欠損するなどの損傷も目立ちます。阿形の蹲鋸〔そんきょ〕(前足を立て、後足ですわる姿勢)する後脚部は大きくえぐりとられるように損傷が目立ちます。このように損傷や磨耗が目立つ両像ですが、頭部を立てて前方をにらみ、胸を張る姿には力強さが感じられます。


またからだの肉づけは大づかみで的確な表現です。鬣〔たてがみ〕の刻みも細部にこだわらず、マバラ彫り(細部を省略し大まかに刻むこと)に刻んだその彫技は、鎌倉時代の手法に通じるものがあります


造立当初は、かなり迫力のある狛犬であったように想像されます。制作年代は、その造像様式が古例に属していますので、鎌倉時代後期、または室町時代初期にはさかのぼるものとみてよいでしょう。