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木造狛犬(生島足島神社)

種別 :市指定 彫刻
指定日:昭和55・4・8
所在地:下之郷

解説

生島足島神社の狛犬は、もとは社殿前の両側に安置されていたと伝えられています。像は檜材を用いた寄木造〔よせぎづくり〕(用材を組み合わせてつくる手法)で、阿形は後頭部から前脚部をふくめて一材、体部と後脚部をふくめて一材と、二材を矧寄〔はぎよせ〕せ、矧目〔はぎめ〕には細いマチ材を入れています。吽形は後頭部から前脚部をふくめて一材、体部は左右に二材と、三材を矧寄せています。


また前脚部の右は膝下、後脚部の右はつけね先を別材を矧〔は〕ぎつけています。さらに両像とも尾部は一材で彫成し、ほぞで体部へ接合しています。体部は両像とも中をくりぬいていません。なお造立当初は白土の下地に彩色がほどこされていたものと思われますが、現状はすべて剥落し素地(生地)になっています。像高は阿形が54.2cm、吽形が54.5cmと、かなり大型の狛犬です。


両像とも前足をそろえて立てた蹲踞(前足を立て後足ですわる姿勢)の姿勢で、顔を阿形は左斜め前方に、吽形は右斜め前方に向けてにらんでいます。頭部はやや小さめにつくられ、やや様式化されたマバラ彫り(細部を省略し大まかに刻むこと)の房々とした鬣〔たてがみ〕(額から肩にかけての長い毛)を首に垂らし、眼球をむき出した瞋目〔しんもく〕(大きく見開いて怒った両眼)、獅子鼻、そして牙をみせる口もとなど、その顔つきは忿怒相〔ふんぬそう〕(怒り示す表情)ですが、その怒りはおさえられ、おとなしい顔つきになっています。また両像とも蹲踞して胸を張り、踏ん張る脚部など、筋肉の盛り上げなどはおだやかで、写実を基本とした鎌倉彫刻のような迫力には欠けますが、像全体はバランスよくまとめられています。


この像は大型の狛犬ではありますが、怒りをあらわにしないおとなしい顔つき、そして体躯〔たいく〕全体のやわらかな肉づけ、やや様式化された鬣〔たてがみ〕の表現などから、制作年代は室町時代に入るものと推定されます。この像に関する記録が伝存しないため、断定することはできませんが、室町時代前半にはさかのぼるものとみてよいでしょう。