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織田信長所用韋胴服(博物館)

種別 :国重文 工芸品
指定日:昭和51・6・5
所在地:上田市立博物館

解説

織田信長の遺品として、旧上田藩主の松平家〔まつだいらけ〕に伝わったもので、鹿の革〔かわ〕で作られています。「韋〔かわ〕」とは「なめしがわ」とも読み、毛皮の毛と脂〔あぶら〕を取り除いて柔〔やわ〕らかにしたものです。「胴服〔どうふく〕」とは後〔のち〕の羽織〔はおり〕のもとになった着物を言います。


表は全体に白い小さな模様が染め付けられていますが、これは小紋染〔こもんぞめ〕といい、今でも和服の地〔じ〕によく用いられています。


この胴服は小紋染衣服の最も古い資料のひとつです。模様の割付けや染め方が優れているだけでなく、室町時代の韋製の服飾資料として貴重なものとされています。


織田信長が永禄〔えいろく〕11年(1568)、近江〔おうみ〕(滋賀県)の有力な大名六角義賢〔ろっかくよしかた〕の箕作〔みづくり〕城を攻めたとき、松平家の先祖の信一〔のぶかず〕は、徳川家康からの応援の軍勢を率いてその戦いに参加しました。その時、信一のめざましい働きぶりに感激した信長は、着ていた桐紋付きの革の胴服を脱〔ぬ〕いで信一に与えたと言います。それがこの胴服であると伝えられています。


また、白鹿革を切り抜いた「五三〔ごさん〕の桐〔きり〕」という紋章が七か所に縫〔ぬ〕い付けられています。松平家の家紋〔かもん〕となっている五三の桐紋は、これにちなんだものと伝えられています。