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銅製孔雀文磬

種別 :市指定 有形文化財 工芸品
指定日:昭和49年6月5日
所在地:小泉2075 高仙寺
年代 :

解説

〔けい〕は中国で発生した打楽器で、その初期は石玉製の「へ」の字形をしていました。わが国へ伝えられてからは金属製となり、主に仏具として使用されるようになりました。『法隆寺資材帳』にもその名が記載され、また正倉院においては鉄の「方磬〔ほうけい〕」の残闕が伝存し、八世紀にはわが国において磬が使用されていたことがわかります。当初は密教寺院において用いられていましたが、後に浄土系の寺院でも使用するようになりました。


高仙寺の孔雀文磬は、五弧式両面製(上縁、下縁が五つの弧を描き、両面が同じつくり)の磬で、左右対称の上縁・下縁は、ともにゆるやかに張った弧を描き、頸縁〔けいえん〕(上部中央の弧)・股縁〔こえん〕(下部中央の彎入〔わんにゅう〕の弧)は比較的長く、着鈕縁(吊手をつけた弧)・肩縁(彎入〔わんにゅう〕部の左右の弧)は短く、側縁(左右の側面部)の傾斜が強く、裙〔すそ〕広がり(下縁の左右の広がり)で、銑部〔せんぶ〕(下縁の左右の角)の先端はやや尖りますが、全体的におとなしい、穏やかな形制(つくり)といってよいでしょう。なお周縁は、断面が菱形〔ひしがた〕で内側に一条の子縁をもっています。法量は上幅20.0cm、下幅22.8cm、側面の幅9.1cm、胎厚0.3cmです。


磬の中央部にもうけられた撞座は、八葉複弁の蓮華文で、中心に花蕊〔かずい〕と八個の蓮子(蓮の花の種子)を陽鋳しています。また撞座をはさみ、尾をはね上げ翼部を広げて相対する孔雀は精緻な箆〔へら〕彫りで、その躍動的な表現はなかなかの彫技です。


高仙寺の孔雀文磬には銘記がなく、またこれに関する記録も伝存せず、その伝来については不詳です。制作年代は、的確な鋳造の技術でその仕上げはすぐれていますが、既述しましたように、全体におとなしく穏やかな形制であることから、制作年代の上限は、南北朝時代とみるがの妥当でしょう。なお上小地方には、時代的にさかのぼる磬の伝存が確認されず、現在この高仙寺の孔雀文磬が、もっとも古い貴重な遺例です。