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前山寺宛武田勝頼朱印状

種別 :市指定 古文書
指定日:昭和45・6・5
所在地:東前山

解説

この文書は戦国時代の天正八年(1580)に、武田勝頼が重臣の土屋右衛門尉〔うえもんのじょう〕に命じて、前山寺の土地のことを定め、寺に申し渡したものです。五月十六日の日付の下の四角の朱印は、勝頼のものですので武田勝頼朱印状といいます。


朱印状には「寺が所有している浅岡〔あさおか〕(安曽岡)の土地や門前屋敷、寺で新しく開発した土地、新たに寄進した堀の内(塩田城跡に内堀地名がある)にある土地、以前から寺で所有している山林、以上を間違いなく寺の財産として認めてやる。その上持主不在の土地が出てきたら、寺へ寄進するつもりだから、武田氏の武運長久を丹精〔たんせい〕込めて祈念するようにと仰せ出された。」と記されています。


勝頼の父武田信玄は、元亀四年(1573)(天正元年にかわった年)に死去したので、塩田地方も勝頼の勢力下におかれました。そこで勝頼はこの地域の、古くからの名刹〔めいさつ〕前山寺の土地所有を、以前の通り認めたり、新たに土地を寄進し、当時前山寺の住職で、祈祷〔きとう〕霊力に勝〔すぐ〕れた僧(名僧真海と伝える)に、武田氏の武運長久を祈念してもらうため、朱印状を出したわけです。


この朱印状は武田氏と前山寺の関係がわかり、勝頼が当地方を治めていたことを知る、数少ない史料として貴重なものです。