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蘇民将来符(信濃国分寺)

種別 :市指定 有形民俗文化財
指定日:昭和43・4・25
所在地:国分

解説

蘇民将来符は、信濃国分寺の八日堂縁日(一月八日)に、大勢の参詣人に買い求められている厄除〔やくよ〕けのお守りで、家の戸口にかけたり神棚に供えられます。しなやかでやわらかな柳の木は、古代中国では神霊の宿る木とされ、悪鬼を払う大事な木としてきました。この蘇民将来符も泥柳の木を手彫りした六角錐形〔ろっかくすいけい〕のものです。


いずれも寺宝の文明十二年(1480)書写の「牛頭天王祭文〔こずてんのうさいもん〕」の縁起によるもので、祀られている薬師如来のご利益にも通じるものとして、室町〔むろまち〕時代から作られてきたものといわれます。


寺で出す符は、大福・長者・蘇民・将来・子孫・人也の文字と魔除けを意味する紋様が、墨と朱で六面に交互に描かれています。また、江戸時代から信濃国分寺の門前に家を構えるムラ人でつくる蘇民講と呼ばれる仲間が、この護符の作成と頒布に大きく関係しています。師走〔しわす〕の朔日〔ついたち〕には、寺の作業場に集まり、「蘇民切り」が行われます。


蘇民庖丁という特殊なナタ・カンナ・ノミを用い、割木でなく真中に芯の通った材を使うのです。大きさには各種ありますが、ふつう「ヘイジ」と呼ぶ10cm大のものと、「二番中〔にばんちゅう〕」と呼ぶその上の大きさのものが、一番多く作られます。形の出来上がった中から、寺の分とは別に講中の分として、それぞれ決められている数を持ち帰り、六面の文字の下にその家独特の七福神の絵姿を中心に描きます。これを箱に入れて国分寺に持ち寄り、本尊前に供えて護摩〔ごま〕の祈祷〔きとう〕を受け、当日蘇民講が扱う分は、本堂前石畳の両側に並んで頒〔わ〕けます。


蘇民将来信仰は全国各地に伝承されていますが、木製の護符を出している所は少なく、信濃国分寺のものは形状などが最もすぐれており、格調高いものといわれています。