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浜村家能面狂言面

種別 :市指定 民俗文化財 有形民俗文化財
指定日:昭和46年4月8日
所在地:上田市立博物館
年代 :

解説

巾広い額〔ひたい〕一杯に皺〔しわ〕を刻み、三日月形の両眼に笑〔え〕みをたたえた翁〔おきな〕の面。口を一文字に結び眉間〔みけん〕に縦皺〔たてじわ〕を寄せてカッと睨〔にら〕み、怒りと強さを表わした鬼神〔きじん〕の面。死んで霊となって崇〔たた〕りを表わす怨霊〔おんりょう〕の面。おでこで受け口の一見〔いっけん〕無表情な女面などなど。能を演じる時につける仮装用具の面には、たくさんの種類があります。


能では一般の成人男子以外の役を演じるとき、つまり女・老人・神・鬼・亡霊〔ぼうれい〕・妖精〔ようせい〕といった役に扮〔ふん〕する時には、必ず面〔おもて〕を用います。狂言も本来能の問にはさんで上演されたもので、軽妙なせりふと仕草の喜劇が、能の重々しい歌舞と対照して、互いに生かし合って続いてきたのです。


浜村家の能面狂言面は、上田藩主松平家の旧蔵品で、最後の殿様忠礼〔ただなり〕公より浜村家が拝領したものと伝えられています。全部で七〇面のうち能面が六二面、狂言面が八面です。この能面のうち面の重複があるので、面の種類は四六種になり、これによって大半の演能が可能です。


これらの面のうち、面打〔めんうち〕(作者)の判明するものが一〇面あって、最も古いものは桃山時代(一六世紀末)に活躍して、秀吉より天下一の称号を受けた是閑吉満〔ぜかんよしみつ〕の作品「若男」の面です(下段参照)。これには甫閑満猶〔ほかんみつなお〕の極書〔きわめがき〕(鑑定の証)が裏面にあります。


十七世紀後半の作としては、出目満永〔でめまんえい〕の「鷹」、児玉近江初代満昌〔みつまさ〕の「中将」「痩男〔やせおとこ〕」「猩々〔しょうじょう〕」「曲見〔しゃくみ〕」、ついで洞白満喬〔どうはくみつたか〕の「怪士〔あやかし〕」、その子洞水満矩〔みつのり〕の「生成〔なまなり〕」には、すべて作者の焼印が入っています。


松平家の初代忠晴(上田へ入封した忠周の父)の丹波亀山(今の京都府亀岡市)在城時代には、能が上演された記事が同家の古記録に見えます。したがってこのコレクションは、その頃から収集されたものでしょう。付属する能装束〔しょうぞく〕や関係の文書がないので、上田藩での演能は全く不明です。


是閑打「若男」
白式尉〔はくしきじょう〕(翁系)小飛出〔ことびで〕(鬼神系) 小面〔こおもて〕(女面系)
小尉〔こじょう〕(尉系)生成〔なまなり〕(怨霊系) 深井(女面系)
大癋見〔おおべしみ〕(鬼神系)邯鄲男(男面系)登鬚(狂言面)