真っ赤な顔に口が左右に裂けて、歯と目と鼻の穴を大きくした恐ろしい仮面をかぶり、大きな幕に二人が入って舞う獅子には、ちょっとびっくりさせられます。
氷上王子神社の獅子神楽〔ししかぐら〕の起こりは、約300年前からと伝えられていますが、担ぎ棒を通して担ぎ歩く神楽屋台の腰回りに、紺地に白の丸に一を抜染めした幕を巻いているので、寛文の頃(17世紀後半)尾張から江戸に入った神楽団「丸一」の系統が伝わっていることがわかります。
大太鼓や締太鼓〔しめだいこ〕、それに笛の囃子〔はやし〕で舞いますが、最初の演目の「神神楽〔かみかぐら〕」で四方を浄め祓〔はら〕う舞の後、大神楽のお家芸ともいわれている滑稽〔こっけい〕な内容の演目も続きます。「二面」「三面」「和唐内〔わとうない〕」など獅子あやしが獅子と絡〔から〕むしわざを見せますし、小学生の女児数人がもち竿と花笠を交替に採〔と〕って可愛らしく「鳥さし」を演じます。太夫と才蔵が大名屋敷の造りを褒〔ほ〕める「万才」で、尾張の影響をのぞかせています。
大神楽獅子は、集落の祭りによく取り込まれ、市内各所にも多数伝承されていますが、祓〔はら〕いを主とする祈祷の舞からユーモラスな余興芸まで、色々なものを取り合わせてよく伝えているところに特色があります。
最初の演目「神神楽」
余興芸の一つ「鳥さし」