上手・田中・神宮寺・岳の四組の鎮守出浦〔でうら〕室賀神社の秋の祭礼が九月中旬に行われますが、ふだん静かな神社の森に包まれた広庭が、華やかな彩〔いろど〕りと笛・太鼓の鳴物で賑〔にぎ〕わいます。
獅子は三人一組で踊る形式のもので、黒染めの麻を背中に長く垂らし、前垂れには藩主から嘉賞として使用を許された松平家の家紋をつけ、派手な裁付〔たっつけ〕に白足袋と二枚草鞋〔わらじ〕をはき、腰部に小太鼓をつけ両手に撥〔ばち〕を採ります。
道ゆきの曲で雌獅子を中央にして三頭が正面に進み、舞込みに入ります。二頭の雄獅子が一頭の雌獅子を奪い合う仕草を、「岡崎」・「狂い」・「頭振りそろ」の曲に沿ってひと続きに演じられます。相手の獅子に噛〔か〕みつく場面や、闘い敗れて静かに立ち上がる演技は格別見ごたえがあります。
この獅子踊りとセットになっているささら踊りは、折鳥帽子〔えぼし〕をかぶり顎〔あご〕ひげのある鼻高面をつけ、白の狩衣〔かりぎぬ〕に裁付と三枚重ねの草鞋をはいた天狗が、波に日の出と鶴亀の描かれた大団扇〔うちわ〕を持って先頭に立ちます。
花笠に白鉢巻、浴衣にたすき、白手甲に白はばき、白足袋にいつけ草履の揃いの支度で、鼻筋を白化粧したささら子たちが、手に摺〔す〕りささらを持って拍子をとりながら順に進み、大太鼓を中心に大きな輪をつくります。唄に合わせて華やいだささらの集団舞踊を見せてくれます。輪の外側では唄上げの若い衆が、赤い長着に兵児帯〔へこおび〕を締め、豆絞りで顔を覆い、五色の短冊をつけた笹竹を持ちます。
なお、ここの三頭獅子は、かつては天王旗を押立てて祇園祭に踊られてきたものですが、昭和30年以降は随時大きな行事のあるときに出たり、鎮守の境内で伝習発表を繰返して今日に至っています。
下室賀の三頭獅子
大太鼓を囲んだ下室賀のささら踊り