塩田平の文化と歴史

●口絵 中禅寺薬師如来坐像(重要文化財)


 長野県で最古といわれる貴重な建築「中禅寺薬師堂」の中には、またすばらしい仏像が、安置されている。本尊の薬師如来である。
 薬師堂のまんなか、四本の柱(「四天柱」という)にかこまれ、いろいろな形のものを重ねた台(「台座」という)の上に坐っていられるのが、この仏様だ。
 まず一礼した後、堂のうす暗い光線の中に次第にはっきりしてくるこの仏様のすがたに目を凝らすとき、私たちは、思わず襟を正す、そして、あらためて合掌するのである。
 まずお顔、円満で温和で、慈悲に満ちている。しかも凛としておかしがたい気品がある。
 右手を軽くあげて掌をこちらにむけ、左手は膝の上に置いて、薬の入った壷をのせていられる姿勢は、薬師様のかたちであるが−解説参照−広く豊かな胸や膝とともに、それと仰ぎみる衆生に、不思議な安らぎと、敬虔の心を与えずにはおかない。
 よくみると、両眼はうすく開いて、下を見おろし(これを「俯瞰の相」という)、しまった口もとも、思いなしか、私たちに話しかけていられるようにもみえる。
 頭上の螺髪(粒粒したもの、頭髪をあらわす)は小さくととのって、美しくもおだやかであり、両肩にかかる衣は、流れるように下って膝をおおう。
 平安末期に盛んに行われた「定朝様」(解説参照)の信濃における代表的な作品であり、また、その手なれた作技からみて、中央の作風をりっぱに守ったすぐれた作家による彫刻であろうと考えられる。
 なお仏像の背後にかかる円形の「光背」や、仏体を安置する「台座」は、破損がかなりあるけれども、残されている部分の意匠は、まことにみごとで、これまた平安末期から鎌倉初期の典型的作品とされている。(解説参照)
 おそらくこの仏は、堂とともに平安末期にできた「塩田庄」の中心的勢力者の造立にかかわるものであろう。

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