依田信蕃の武功を中心に記述されたもの。信蕃は佐久の出身で、武田氏に仕えていたが、天正10年武田氏滅亡後は、徳川家康に属して活躍、その子康国は小諸城主として、佐久郡を支配した。
写真は当時北条氏に属していた真田昌幸を、天正10年9月に徳川方に鞍替えさせた工作を記した部分で、「真田をさえ引きつければ残りのものはどうにもなると、2度真田へ使者を出し3度目には真田昌幸自身が信蕃の本拠、佐久郡芦田におもむき信蕃と面談、話がついて昌幸が家康に臣属することになった」と述べられている。ただし、昌幸が徳川方につくにあたっては昌幸の弟信昌(信尹)の活躍も大きかった。
なお依田記の原本は所在不明であるが、現存する写本のなかでは、この清水氏蔵本が最良のものであり、原本に近いものとされている。
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