安楽寺にある経典の蔵です。中には八角形の輪蔵があり黄檗〔おうばく〕版の一切経〔いっさいきょう〕が納められています。
経蔵は寛政十二(1800)安楽寺十三世南沖仏鯤〔なんちゅうぶっこん〕代に建てられ、この地方に現存する経蔵では最大規模のものです。
白壁の土蔵造りで、正面の中央に両引の腰板縦連子戸〔たてれんじど〕を立て、その外側に両開きの防火用の厚い漆喰扉〔しっくいとびら〕を吊り、両側には花頭窓〔かとうまど〕(上部の中央をとがらせたア−チ形の窓写真参照)があります。
屋根は銅板葺きの宝形造〔ほうぎょうづくり〕(「中禅寺薬師堂」参照)で、屋根のてっぺんにのっている宝珠〔ほうじゅ〕・伏鉢〔ふくばち〕・露盤〔ろばん〕はすべて瓦製です。
内部は、たたき床で、天井には花鳥の絵が彩色で描かれている格天井〔ごうてんじょう〕です。中央部に朱塗りの八角輪蔵が置かれています。
八角輪蔵は、八角の太い心柱を軸柱に廻転するように作られた八角形のお経を読むための便利な書庫です。回りには両開きの戸が八面についた経本棚が設けてあり、中には黄襞版の鉄眼の一切経全巻を納めてあります。