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審 査 を 終 え て審査委員長(信州大学教育学部芸術教育教授) 橋 本 光 明
今日の図工・美術教育では、子ども一人ひとりの表現のよさや豊かさを見出し、育てていくことが大切にされています。これは60年前になりますが戦後の創造主義や表現主義の考えを受け継ぎ、発展させたものです。この創造主義は、さらに遡ると山本鼎の自由画教育に辿りつきます。 鼎というと「自由」という二文字が浮かび上がりますが、鼎の「自由」の根底には「創造」の精神が満ち溢れていました。そこには、美術活動は人間性に帰するべきという強い信念があります。人間性の喪失、情緒の欠乏が進み、衝撃的な事件が多発する現代社会にあって、この人間本位の教育観は、多くの示唆を与えてくれます。ですから、この大賞展の果たす役割は大きなものがあります。 今回の応募数は1658点で、回数を重ねるごとに増えています。これは、山本鼎の高い識見と信念、情熱などが、過去2回の大賞展を通して理解されてきた結果であると思います。これに応えて審査員も誠意と熱意をもって鼎の「創造」の視点を大事にしながら作品を選びました。 各部門ともすばらしい作品が多く、あらためて版画の魅力を子どもの表現から感じとることができました。これらの作品を指導し、出品された先生方や関係者、保護者の皆様に深く敬意を表しますと共に、版画による教育の大切さを多くの方々にお伝えくださいますことを心から願っています。 審査員青島 洋祐 (上小美術教育研究会会長) 【敬称略五十音順】
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