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子どもの創造力によせて山本鼎版画大賞展実行委員長 小宮山量平 1920年代から30年代に小学生生活を体験した子どもたちの多くは、知らず知らずのうちに、山本鼎の≪自由画教育≫の洗礼を受けて育ったと言っても過言ではありません。”子どもにはお手本を用いて教えなければなどと思うのは大間違いだ。私たちを囲んでいる豊かな自然は、いつでも色と形と濃淡で眼の前に示されているではないか。それが子どもらにとっても大人にとっても何よりのお手本なのだ”・・・・・と考えた山本鼎は、敢えて自由画という提案をしたのでしたが、同じことを「創造」と言っても良いのだと教えてくれたものです。そして心からの愛をこめて子どもたちの創造力を引きだすことに心を傾けたのでした。そのために彼が好んで□にしたのは、”子どもについて人の道”を学べというトルストイ翁の言葉でありました。 そんな子どもたちの創造力を当時の展覧会で見た石井鶴三は、”何と子どもたちはみんな天才だ!”と叫んだそうです。そんな時代から何十年も経った近頃になって、これら上田の地に格別に縁の深い大先達たちの温もりある言葉が、新鮮な輝きを帯びて甦える時代が、再び巡って来ているのではないでしょうか。 今回の≪児童生徒の版画大賞展≫は、すべての創作者たちに、そんな自由画の原点を如実に思い知らせてくれるのではないかと痛感します。 (2000.2.1) 審査を終えて審査委員長(信州大学教育学部芸術教育教授) 上田秀洋 純真な力強い魂の鼓動・・・伸びやかな温もりのある優しさ・・・自由で夢のある表現など、混迷し様変わりする若者・大人の社会を背景に、子供たちの作品は「確固たる存在と輝き」をもって、私たち審査委員に感動を与えてくれました。又、今回ご覧になる皆様にも、その感動をお届けできるものと、期待しております。 応募作品は長野県下の小学校・中学校・養護学校等の50校から、児童・生徒あわせて1130点ほどありました。その内から、入選・佳作・受賞作品の259点を選出させて頂きました。学校教育においては、その目的・効果の上から様々な範囲を設けて版画・美術の学習を行いますが、展覧会においては、より自由で変化のある表現を望みたいと思います。又、多様な版種の体験によってもその表現の幅は広がるでしょうし、木版の表現のさらなる豊かさをも獲得できるものと想像されます。 全ての人々が、版画づくりや鑑賞の追体験により美術・芸術することは、人類の理想の姿でもあります。江戸の浮世絵版画の素地の上に、山本鼎の自由画・創作版画の精神を得て、版画文化が21世紀にさらに華開くことを願っております。 審査員池田 輝(上田女子短期大学講師) 【敬称略五十音順】 |