デジタルアーカイブとは?
人類の歴史の中で創造され、継承されてきた文化資産は、人類共通の財産です。しかし、これら有形・無形の文化資産の中には、修復と保存の懸命の努力にもかかわらず、崩壊、消失していくものが多数あります。
デジタルアーカイブ*は、このかけがえのない文化資産を記録精度が高く、映像再現性に優れたデジタル映像の形で保存・蓄積、次世代に継承していくものです。
また近年のインターネットなどの普及により、美術館、博物館などで、その場所でしか見る事の出来ない美術品・貴重資料を、世界中の人々が自由に閲覧できるよう、世界規模で構想の相互連携と協力が進んでいます。
アーカイブ[archive]
英和辞典では公文書記録保管所という意味ですが、海外や最近の日本では、古文書や過去の映像、写真などを保存する文化遺産のライブラリーを指していうケースが多くなっています。
またアーカイブを広く解釈して必ずしも過去の記録の集積にとらわれずに、新しいデジタルコンテンツのアーカイブといったデータベース的な意味合いにも用いられるようになってきています。
デジタルアーカイブの意義
- 映像遺産の保全
過去の情景、風俗を記録した映像はその国や地域にとって貴重な文化遺産であるという発想から、それら映像遺産を散逸と消滅の危機から守り保存する。 - 文化遺産の記録
劣化や損傷が進む歴史的文化財、また伝統芸能や伝統技術などの無形文化財をデジタル映像で記録し、後世に継承する。 - 地域映像ライブラリー
地域の今日の姿を体系的に映像で記録し、郷土学習への活用と次世代への継承を図るための映像ライブラリーを構築する。 - 地域産業アーカイブ
地域の産業活動の情報化を図るため、地域の企業が共同利用できるよう商品やデザインなどのデジタル映像データベースをつくる。
デジタルアーカイブにより期待される効果
- 資料の破損・劣化防止
デジタル化することにより、破損を恐れることなく貴重資料を提供できます。
原資料を保護するために制限がある複写についても、コンピュータを用いてのプリントアウトにより提供が可能となります。 - 新しい表現の実現
いくつかの資料の映像を部分的に切り出し、再合成することや、様々な解説・音声などを加えることにより、元の資料をより膨らませた形での情報提供ができるようになります。 - 時間的、地理的な制約を超えた資料提供(学習教材・生涯学習へ)
コンピュータを用い、どこからでも貴重資料へアクセスできるようになります。また、同時に多くの利用者に資料を提供でき、各小中学校や自治体による生涯学習への活用が行えます。 - 様々な角度からの資料検索
データベース化により、様々な角度から資料の検索が行えます。それにより、資料を新たな切り口から見ることが可能となります。
デジタル技術利用環境の進展
- ハードウエア技術の進歩
高速プロセッサーの普及により、マルチメディアのデータが容易に扱えるようになりました。又、DVD等の媒体の転送速度が飛躍的に向上し、高品質な動画を含むデータの再生が可能となり、MPEGなどの情報圧縮技術の進歩によって、画像や音声の処理が容易になるなど、システム全体の性能が向上しています。
この結果、低価格のマルチメディアパソコンやマルチメディア対応テレビの普及にも拍車がかかっています。
高精細デジタル映像分野では、用途によっては解像度2000×2000ドット静止画レベルの要求もありますが、日本に於いてはハイビジョンレベル解像度〈1920×1035(1080)〉のシステムが実用化され、一般の鑑賞用途を充分満たすものと評価され、コストダウンとともに普及が進んでいます。 - ソフトウエア技術の発展
3次元の形状をコンピュータで定義するモデリング技術、現実感をリアルに表現するレンダリング技術などの画像処理技術が進み、高精細なCGのためのアプリケーションソフトの開発が急速に進展しています。それに伴うCGワークステーションの性能の向上も著しく、リアルな映像を低コストで創出することが可能となりました。
また、映像空間の体験的な表現を試みるバーチャルリアリティ(仮想現実)も進められています。
一方、これらの分野に於けるソフトウェア技術の進歩に伴い、従来特殊なハードウェアでしか実現できなかった機能がソフトウェアで可能となり、システムの低価格化と普及を大きく促進しています。 - インターネットの急速な進展
容量の大きなマルチメディアデータベースを実現するサーバの出現、インターネットをはじめとするネットワークインフラの進展などによって、多数のシステム間にまたがるマルチメディアネットワーク環境が出来てきました。