山本鼎版画大賞展

第5回山本鼎版画大賞展

入賞作品

大賞

予兆 '11-3-11 (水性木版 64cm×98.5cm)

カドノ アキラ

受賞者のコメント

「誰もが、崩壊すべき世界の手前で静止しているか、あるいは運動に向かってエネルギーを溜め続けているか、だった」
これは高村薫著「太陽を曳く馬」の一節ですが、この度の東日本大震災がそうであったように、今、現代社会には負のエネルギーが溜まり続けており、それがいつ崩壊へと繋がるのか、まったく予断を許さない。ただ、一見平穏な日々の社会現象にも、“予兆”を感じ取れる感性だけは磨いて行きたいと思います。
最後になりましたが、この度このような大きな賞をいただき、審査員の方々、関係者の皆様には心より御礼申し上げます。

■略歴・所属
1942年 京都生まれ
1967年 立命館大学卒業

■画歴(主な出品歴及び受賞歴)
2004年 9月 あおもり版画トリエンナーレ2004 入選
2005年10月 第3回山本鼎版画大賞展 入選
2008年11月 第4回山本鼎版画大賞展 入選

準大賞

Yellow Landscape(リトグラフ 100cm×70cm)

小山 京子

受賞者のコメント

この度は、準大賞を頂き大変ありがとうございました。
一瞬たりとも止まることのない時間、移ろいゆく風景、光や影、風の音・・
私は私自身の内にわき起こる抽象化されたかたちを表出する。「今を生きるよろこび」とその息づかいが作品から聞こえてくることを願っています。
この受賞を励みに、これからも自分の世界を追求し、精進してまいりたいと思います。
最後になりましたが、上田市実行委員会の方々、審査員の先生方、私を支えてくださる皆様に心より感謝申し上げます。

■略歴・所属
同志社大学卒
日本版画協会準会員
版画京都展実行委員会

■画歴(主な出品歴及び受賞歴)
2000年、2002年 現代版画コンクール展(大阪現代美術センター)
2000年 日本版画協会展(以降毎年出品・東京都美術館)
2001年 日本・中国国際版画展奨励賞(京都市立美術館別館)
2002年、2005年、2008年 山本鼎版画大賞展
2009年、2011年 京展(京都市美術館)

Reflections-2011-3 (木版・紙版 71cm×102cm)

鈴木 敏靖

受賞者のコメント

この度は準大賞に選んで頂き誠にありがとうございます。上田市、実行委員会及び、審査員の皆様方に深く感謝を申し上げます。私が積極的に版画作りに携わりはじめたのは、60才を過ぎたあたりからで暗中模索の連続です。したがって今は作品をできるだけ多くの方々のお目に触れることだけを願って、その機会を窺っているところです。
版画というメディアは技術の情感があたかも内容の情感として見えたりする、スリリングなところが好きです。歳のことなど、ひとまず忘れて制作に勤しみます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

■略歴・所属
1937年 静岡県生まれ
現在 日本版画協会準会員

■画歴(主な出品歴及び受賞歴)
2007年 あおもり国際版画トリエンナーレ2007(2004年スポンサー賞)
2008年 第7回高知国際版画トリエンナーレ展(2回・5回・6回)入選
2008年 第4回山本鼎版画大賞展(2回・3回・4回)入選
2009年 第6回飛騨高山現代木版画ビエンナーレ展(大賞)(第4回優秀賞)
2010年 第78回日本版画協会展(準会員推挙 A部門賞候補)
2010年 50人の現代日本版画展(イスラエル ティコテイン日本美術館)
2011年 第11回浜松市美術館版画大賞展(静岡新聞社賞 買上)

サクラクレパス賞

Kioku-2011-06-10 どこにいくのか (木版・コラグラフ 80cm×70cm)

浦江 妙子

受賞者のコメント

この度はサクラクレパス賞を頂き、ありがとうございました。
この受賞を励みにこれからも精進して参りたいと思います。
私は、実際に誰かが使った服を版として使っています。なぜなら誰かが着用することによりその瞬間からただの物であった服が「特別の何か」になるからです。脱ぎ捨てられた瞬間に着ていた人の想いや気配が残る「特別な何か」になることに、私は強く惹かれています。そして、その「特別な何か」になった服を版として使い、版画というかたちにすることでそこにある「何か」を探しています。

■略歴・所属
横浜市生まれ
多摩美術大学絵画科油画専攻卒業
東京藝術大学大学院美術研究科博士課程版画専攻修了
現在 日本版画協会準会員 モダンアート協会会友

■画歴(主な出品歴及び受賞歴)
1979年 日本版画協会展 新人賞
2007年、2010年 あおもり国際版画トリエンナーレ
2008年、2011年 高知国際版画トリエンナーレ
2008年 第4回山本鼎版画大賞展
2009年 第6回飛騨高山現代木版画ビエンナーレ 協賛賞
2010年 第60回モダンアート展 新人賞
2011年 第61回モダンアート展 佳作賞
日本版画協会展 賞候補

優秀賞

老王の宮殿 ―闇に立つ― (銅版 100cm×70cm)

池田 俊彦

受賞者のコメント

ただそこにある事がいかに困難な事か、それを実感させられる光景を近頃よく目にします。美しくかけがえの無いもの達が、大き過ぎる力やほんの少しのきっかけで瞬く間に跡形も無く失われてしまいます。人間も家族も猫も街も空き缶も思い出も優しさも目の前で消えて行くのに私達にはなす術もありません。
美しくかけがえの無いものはもちろん、憎しみや悪意ですらどんな困難や闇の中でもただそこにありさえすれば希望や喜びへと発展する事が出来るのです。
その生き物はただ生き続ける事で王となりました。彼はただそこにある事の困難を一身に背負い今日も闇の中で立ち続けます。
この度の受賞を励みに今後とも制作に精進致します。

■略歴・所属
2003年3月 多摩美術大学美術学部絵画学科油絵専攻 卒業
2005年3月 東京芸術大学大学院美術研究科絵画専攻(版画研究分野)修了
現在 大学版画学会会員
日本美術家連盟会員

■画歴(主な出品歴及び受賞歴)
2007年3月 Prints Tokyo 2007町田市立国際版画美術館賞
2007年3月 平成18年度 文化庁買上優秀美術作品
2008年3月 高知国際版画トリエンナーレ展 日和崎尊夫賞
2011年1月 ドローイングとは何か展 最優秀賞

花びらを/はらはらはらと/捨てながら/実を抱きつつ/野草は立てり/U (木口木版・コラージュ・手彩色 63cm×91.5cm)

若月 陽子

受賞者のコメント

花びらを/はらはらはらと/捨てながら/実を抱きつつ/野草は立てり/
十数年前に他界した母の詩である。彼女は遠い故里を恋い身近な山野を愛でた。私は母との草摘みに興じた幼年期を思う。また、小さな靴下に付いた狗尾草の実を一つづつ外していた私の子育ての頃を思う。どんな時代でも自然の摂理の中の巡る命と共に手から手へ繋ぐたおやかな時間の記憶を紙面に染みのように留め置きたい。
<細々と続けていた木口木版をコラージュという方法でまとめてみた。まだ数年の試みである。このような稚拙な私の作品に心をとめて頂き感謝に堪えない。不安の中の作業であったが、心強い励ましとなった。'11.神無月に>

■略歴・所属
1959年6月 愛知県生まれ
1981年3月 名古屋造形芸術短大洋画(版画コース)専攻科修了
現在 自由美術協会会員・中部女流美術春艸会会員・一宮作家協会会員
名古屋造形大学非常勤講師

■画歴(主な出品歴及び受賞歴)
2001年 リキテックス・ビエンナーレ入選
2007年 「東三河の美術」〜郷土ゆかりの作家たち出品
2009年、2011年 アート・トルネード参加
2009年 MINI PRINT INTERNATIONAL of CADAQUES
2011年 IMC2011版画絵本展
他 個展(愛知県)12回など

kick off (銅版 36cm×55cm)

東 弘治

受賞者のコメント

描くべきものは限りが無い、しかしそれらに形を与え、決められた画面に構成し版画として制作を始めるには、いつもそれなりの決断が必要だ。きっかけはいつやってくるか分からない。今回は原発事故がその引き金を引いた。報道の瞬間、暴走して走る無脳の人型が浮かぶ、あらゆるものをサッカーボールのように高々と蹴り上げながらも走る事を止めない姿を。自分にとって災害をきっかけに制作した作品が多い事に改めて気づく、幸福を願いつつ、破壊や破滅に惹かれるのは何の因果だろうか?

■略歴・所属
1955年10月 熊本市生まれ
1978年3月 熊本大学教育学部美術科 卒業
無所属

■画歴(主な出品歴及び受賞歴)
1980年 版画グランプリ展 賞候補
1981年 版画グランプリ展 グランプリ
1999年 第1回山本鼎版画大賞展 準大賞
2002年 第2回山本鼎版画大賞展 サクラクレパス賞

だれだかわからない (銅版 90cm×90cm)

長嶋 由季

受賞者のコメント

人という存在そのものに興味があります。人の渦巻く感情やオーラ、周りの浮遊する時間や空間のゆがみ、その場の雰囲気、音の響き方、温度、湿度、声の聞こえ方、見えないものだったり、音として感じ取れないかもしれません。人から発されるものがぶつかり、交じり、反発し、融合し、変化する瞬間を捉え、私を通して表現したいと思うのです。画面の中の人物像は私の中の人という存在です。目覚めていながら夢を見ているかのように現実から離れて何かを考えている状態を白昼夢といいます。もしかしたら、私は夢の中の人物の幻影を追い求めているのかもしれません。そのような疑似体験的感覚を制作の衝動にしている様にも感じます。

■略歴・所属
1989年3月 東京生まれ
2008年4月 多摩美術大学絵画学科版画専攻 入学
現在 多摩美術大学絵画学科版画専攻 4年在学

■画歴(主な出品歴及び受賞歴)
2010年11月 あおもり国際版画トリエンナーレ2010 みちのく銀行賞
2011年8月 日本版画協会 第79回版画展 入選
2011年8月 アールデビュタントURAWA2011 選抜展
伊勢丹浦和7F美術画廊
2011年10月 第7回世界絵画大賞展 入選

enlightenment Y (銅版 50cm×80cm)

野嶋 革

受賞者のコメント

この度の受賞を大変光栄に思います。審査員の皆様に感謝申し上げます。
地震と津波そして台風による大きな天災と、それに伴う原発事故。
私自身直接に被災したわけではありませんが、これまでの日常や価値観を一変させるほどの衝撃をうけるとともに、作家として、ひとりの人間として、何ができるかを問われる1年となりました。答えのでない問いに悶々としながらも、ひとつひとつ考えや想いを形にしていくしかない、そう思いながら今回の作品に取りかかったのを覚えております。
自然の美しさや残酷さ、畏怖、そしてその自然とどう向き合うか、今後の表現において、これまで以上に真摯に向き合っていきたいと思います。

■略歴・所属
2008年3月 京都市立芸術大学美術研究科修士課程版画専攻 修了

■画歴(主な出品歴及び受賞歴)
2008年6月 京展2008年 版画部門 京展賞
2008年11月 第4回山本鼎版画大賞展 優秀賞
2010年4月 第78回版画展 日本版画協会賞

キリンビール賞

Trace-Focus-09.O.Ar.F.003 (孔版 91cm×63cm)

池田 潤

受賞者のコメント

私は、視覚のもつ運動性をテーマに制作を続けています。
望遠鏡をのぞき、宇宙の星を見上げるとき、顕微鏡をのぞき、微生物へと迫っていくとき、私たちの眼前にはぼんやりとした光景がまず現れ、そこから対象へとピントをあわせていく。
この過程に現れる映像は、私たちと対象の間に垂らされた一枚のスクリーンとして、鑑賞者の視界を遮りイメージは浮遊した状態を保ちながら、マクロな存在である宇宙も、ミクロな存在である微生物も等価な存在として、そこに表出しているのです。
最後になりましたが、この度はこのような賞を頂き、審査員の先生方、実行委員会ならびに関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

■略歴・所属
1984年2月 長野県生まれ
2006年3月 多摩美術大学美術学部絵画学科版画専攻 卒業
2008年3月 多摩美術大学大学院美術研究科博士前期課程 修了
現在 多摩美術大学大学院美術研究科博士後期課程3年在籍
日本版画協会準会員
大学版画学会会員

■画歴(主な出品歴及び受賞歴)
2005年 第30回全国大学版画展 美術館収蔵賞
2007年 あおもり国際版画トリエンナーレ2007 審査員奨励賞
2009年 第86回春陽展 版画部奨励賞
2010年 日本版画協会 第78回版画展 立山賞
2011年 日本版画協会 第79回版画展 準会員優秀賞(FY賞)
第8回高知国際版画トリエンナーレ展 優秀賞
第3回NBCメッシュテック
シルクスクリーン国際版画ビエンナーレ展 優秀賞

奨励賞

nest (銅版 50cm×80cm)

梅田 蓉子

受賞者のコメント

銅版画との出会いがあり、何か引きつけられながら制作してきました。
野辺に咲いた花の小宇宙や、日々の生活の中で心に感じたことなどをテーマにしています。この作品は、現代社会の何か薄らいだ人間関係の中で、大きく包み込んでくれる母体のようなもの、心の拠りどころとなる、確かな、大きなものを思いながら描きました。
この度は、奨励賞を頂き、ありがとうございました。
審査員の方々、上田市実行委員会の皆様、私を支えてくださった方々に、心より感謝申し上げます。

■略歴・所属
2001年 長野県飯田市在住

■画歴(主な出品歴及び受賞歴)
2008〜2010年 日本版画協会展 賞候補・入選
2006年〜 まどかぴあ展(大野城) 入選