2. 製作過程11月にはいると蘇民将来符を作成する準備がはじまり、真田町、東部町、和田村などの山林からドロヤナギの原木が切り出されてくる。師走〔しわす〕の朔日〔さくじつ〕(12月1日)になると信濃国分寺では、蘇民将来符の作り初めの行事である「蘇民切り」が行われる。 「蘇民切り」の当日には、寺の作業場に20名ほどの蘇民講の人々が集まり、切り初めの作業が行われる。最初に住職により切り初めの儀式が執り行われ、刃物を用いる作業の安全が祈願される。続いて長老によって牛頭〔ごず〕天王の御神体が作られる。これは特別な形態をした護符で、境内の一隅にある牛頭天王の祠*1に祀られる。 「蘇民切り」の作業はその日の夕方まで行われ、夜には寺から一飯が出されて、解散となる。その後は蘇民講の人々は各自の家で護符作りを行う。1月7日には寺に納めて護摩の祈祷*2を受け、その後一般に頒布されている。
蘇民将来符の作成には、蘇民庖丁と呼ばれている庖丁に似た特殊なナタやカンナ、ノミなどが用いられ、すべて手作業で行われている。形が出来上がったものには、住職や寺関係者が墨と朱で「大福長者蘇民将来子孫人也」の文字や紋様を書き入れ、仕上げが終了する。 現在信濃国分寺では次のような符号で呼ばれる9種類の蘇民将来符を作っている。小さい方から「ケシ」・「平ジ」・「二番中」・「中」・「中ジク」・「中大」・「大」・「大ジク」・「大々」で、全長1cmほどのケシから高さが27cmほどのものまで9種類がある。このうちケシ、中ジク、大ジク、大々の4種類は原材の都合や製作の難しさがあり、また一般には頒布しないものもあり、製作数はわずかである。残りの5種は八日堂縁日で普通に頒布されているが、特に「二番中」、「平ジ」が全体の数の8割を占めている。なお「平ジ」の蘇民将来符に限って、年間を通して寺務所で頒布が行われている。 |
*1祠(ほこら)*2祈祷(きとう)関連する映像 |
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