上田市商業家案内
長野県上田市全図・裏 大正11年(1922)
長野県上田市全図(大正11年・上田市立上田図書館蔵)の裏面にある、「上田市商業家」の広告である。大正8年、城下村を併合、上田市制が発足、長野、松本に次ぐ第三の都市として出発した。大正時代になると、主産業である蚕糸業は繭価の上昇で大発展した時期である。農家は養蚕景気に沸き、桑園は拡大の一途をたどっていた。上田では蚕種業・製糸業を始め関連産業が好況で、町の商店街も賑わい「蚕都上田」と呼ばれた。この広告はこの蚕都上田の活況の一端を知る資料である。
上田商業は推進役の上田商工会議所が統括していた。この商業家案内のトップ11人は上田商家の代表格である。飯島保作は商工会議所副頭取、畑金次郎・笠原善吉・滝澤一郎・滝澤助右衛門・成沢伍一郎・丸山平八郎の6名は第1期市会議員を兼ねていた。つづいて上田を代表する蚕種業、繭糸商・製糸業の主要商家が並んでいる。蚕種業者は旧城下村の中之条・御所・諏訪形が多かった。繭糸商・製糸業者は上田市街地であった。
蚕都上田の発展は金融業が盛況であった姿を銀行業に見ることができる。この「案内」に銀行は支店を含めて11行が記されている。また、街の繁栄は演劇等の娯楽にも広がり、演芸館・劇場が4館を数えることができる。さらに、市民の生活用品である酒類・醤油・味噌を商う店、綿糸・染物を商う店、魚・金物・雑貨を商う店が集まり、上田の街の繁栄を支えていた。
この資料作成は上田市下川原柳町の測量製図者馬場亀松である。
上田市立上田図書館蔵
解説:佐々木清司氏
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