上田市他商工家案内

　「長野県北信交通明細図」裏面の上田市他商工業案内広告である。真ん中に信越線・篠ノ井線、小諸からの佐久鉄道と布引鉄道（小諸―島川原）も見える。上田では上田温泉電軌（株）の青木線（上田ー青木）・川西線（上田原―信濃別所）・依田窪線（下之郷―西丸子）・北東線（上田―真田・傍陽）、丸子鉄道（株）の丸子線（上田東―丸子町）が赤色で記されている。これらの鉄道の周囲に上田商工家が広告を載せたもので、昭和初期の上田産業界を知る資料となっている。

　ここに載っている商工家の業種と大正11年の「上田市商業家案内」を比較すると、蚕種業・製糸業は小さな扱いになっている。これは世界大恐慌による蚕糸業への打撃が大きかったことを物語っている。これに対し旅館や料理屋の広告は大きく、別所温泉の旅館は8館が載っている。これは恐慌後の産業界の再編成と鉄道を利用しての観光や温泉が脚光を浴び盛況であったことを物語っている。

　この広告でひときわ目を引き大きく扱われているのがスキー関係である。昭和初期菅平スキー場が開設され、最先端の人気のスポーツとなっていた。菅平にはホテルやスキー場宿舎（民宿のはじまり）が10軒営業、上田にはスキー製作所やスキー用品の商家もあった。

　この広告には商家の業種の多様化がみえる。洋品店・時計店・ラジオ店・楽器店・写真屋と商業活動も活発化している。広告の左端にこの地図の販売店が記されているが、これを見ると広範に販売された地図であった。