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蘇民将来符 その信仰と伝承
八日堂蘇民将来符
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蘇民将来の形と図柄

木製柱状の蘇民将来符(1)

 蘇民将来符は、現在でも護符として全国各地の神社や寺院から頒布されているが、材質的にみて木製と紙製の2種類がある。しかもそれぞれ形状の違いがみられる。また、これらが頒布される祭日等も各地で異なっているが、概して1月上旬の祭日に頒布されるところが多い。

 更に、ここに書かれる文字もおおよそ次の二つに大別されるものとみられる。つまり、その一つは「蘇民将来子孫人也」(あるいは書き方は若干異なるが、同意のものも含む。)となり、もう一つは「蘇民将来子孫門戸也」(同意のものも含む。)である。信濃国分寺でつくられる蘇民将来符は、「大福長者蘇民将来子孫人也」と書かれている。その最初の4文字「大福長者」が付けられるものは、岩手県東磐井郡藤沢町の長徳寺から出されている蘇民将来符にもみられるというが、詳しいことはわからない。このほかの地域から頒布されるものにはこの文字がなく、これはむしろ特殊なものといえるが、いずれにしても前者の分類に含まれるものであろう。以下、各地に伝承される蘇民将来符を材質的な違いや形状的な違いに分類してみてみたい。

1. 木製の護符

小さい護符を製作する黒石寺の檀家の人の写真
蘇民袋に詰める小さい護符を製作する黒石寺の檀家の人
(山極悦男氏撮影)

 木製のものの中には柱状のもの、板状のものとがみられる。前者には八角形・六角形・四角形、更に円形のものもみられる。また、材質にも柳・桐・ヌルデ*1・タラ*2などの材木を使用するものがある。

(1)柱状の蘇民将来符

 岩木山神社(青森県弘前市)のものは、柳材を使った末広がりの六角形で、長さ約3cm・径約6mmを測り、上部に赤と青で文様を描き、下部の各面に一字ずつ右回りで「蘇民将来子孫」と記している。柱状の中心に上下に穴をあけ、ここに紙よりを通し、その下端に五色の糸を垂らしている。

映像アーカイブ「蘇民信仰起源と各地の蘇民将来符」の再生 黒石寺(岩手県水沢市)では、毎年旧暦の1月7日の夜から8日の朝にかけて、若者たちが裸で蘇民袋を争奪する蘇民祭が行われているが、この麻袋に入った護符はヌルデの木でつくられた六角柱状の蘇民将来で、五穀豊穣*3・無病息災*4の祈願がこめられているという。これは長さ約57cm・径1.3cmの長尺の護符から、さらに1寸(約3cm)の小さな護符をいくつか作りだし、これを蘇民袋に入れるのである。文字入りのものは長尺の護符の頭部に一つだけ、「蘇民将来子孫門戸☆」と2字づつ右回りに墨書きされており、あとは・・・と省略されている。蘇民祭で、この数少ない文字入り護符を得た者はとくにご利益があるという。また、同県の平泉町の毛越寺でも、旧暦1月20日に同じような祭りが挙行され、麻袋に入った蘇民将来符を裸の若者が奪い合ったというが、現在は行われていない。

陸奥国分寺蘇民将来符と黒石寺蘇民将来符の写真
陸奥国分寺蘇民将来符 (宮域県仙台市)

黒石寺の蘇民将来符
黒石寺蘇民将来符 (岩手県水沢市)

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補足・関連項目

*1ヌルデ

ウルシ科の落葉小高木。山野に自生。葉は大形の羽状複葉で、中軸に翼があり、枝先に密に互生する。夏、枝頂に白色の小花を円錐状に多数つける。果実は扁球形で赤熟する。葉は紅葉が美しい。また、葉に虫こぶを生じ、これを乾燥したものを五倍子・付子(ふし)と呼び、タンニンの原料とする。フシノキ。
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*2タラ

ウコギ科の落葉低木。山野に生える。全体に鋭いとげがある。葉は二回羽状複葉で枝先に集まって互生。夏、白色の小花を多数つけ、秋、球形の液果が黒熟。若芽・若葉は食用。材はマッチの軸木などとし、樹皮は薬用とする。
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*3五穀豊穣

五穀とは人間の主食となる代表的な五種の穀類。日本では米・麦・粟(あわ)・黍(きび)(または稗(ひえ))・豆をいう。いつつのたなつもの。
つまり穀物が豊かにみのること。
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*4無病息災

病気をせず健康であること。

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