紙製の護符紙製のものは筆で書いたもの、あるいは版木で刷ったものがあるが、これもまた各地で配布されている。その分布をみると新潟県地方に多くみられるようで、いずれも正月中に配布されるものが多い。この護符はまた門口に貼るようで、「蘇民将来子孫也」あるいは「蘇民将来子孫門戸也」などの文字が記されている。
これらはいまでは、家内安全・交通安全・豊作祈願・安産祈願あるいは学業成就などの御守りとして配られるものである。 岩木山神社(青森県弘前市)からは、さきにあげた木製柱状の護符のほかに、紙の札も出されている。「○蘇民将来子孫門☆」の版木で刷られた文字であるが、この文字の中央両サイドにそれぞれ「九九八十一」と逆に「九九八十一」の数字がやはり縦に刷られている。どのような意味があるのか不明である。 源太寺(秋田県仙北郡北浦の庄)のものも、「蘇民将来子孫門戸」と押されたもので、正月に修験者*1が配って来て、これを各戸では門口に貼ったという。 関東地方では醫王寺(埼玉県飯能市)から配布されている。「蘇民将来子孫門戸也」の版木で刷られたお札であるが、文字の両端に特殊なマークも刷られている。
安養寺(新潟県北魚沼郡)では、「蘇民将来子孫之家也☆」と書かれた御礼を正月の5・6日に各戸に配布するが、これを各戸では門口のみえるところに貼ったという。 また、最明寺(新潟県岩船町)のものは、「(梵字)蘇民将来子孫也☆」と5行に書かれたもので正月の三ガ日に配布されている。さらに、山野神社(新潟県北蒲原郡中条町)で正月7日に配布するものは、「(梵字)蘇民将来子孫也」を12行に渡って記されていて、そのまま貼る家と、これを切って月毎に貼る家がみられるという。 八坂神社(京都市東山区)からも、木製柱状護符のほかに「祗園祭の粽(ちまき)」と称する護符も頒布されている。これは身を清め、無病息災を祈ることに起源をもったものといわれ、古来より八坂神社の御守となっている。この笹の葉に巻かれ、さらに藁〔わら〕の柄がつけられた粽は長刀鉾*2(山車)から撒〔ま〕くため、長刀鉾の粽とも呼ばれているが、ここに「蘇民将来之子孫也」のお札が添えられている。この粽を門口に吊るして厄難消除を祈願するのであるという。 |
*1修験者(しゅげんじゃ)修験道の行者。兜巾(ときん)をかぶり、篠懸(すずかけ)と結い袈裟(げさ)をつけ、笈(おい)を負い、金剛杖を持ち、法螺(ほら)を鳴らし、山野をめぐり歩いて修行する。山伏。験者(げんざ)。 *2長刀鉾(なぎなたぼこ)祇園(ぎおん)祭の山鉾(やまぼこ:祭礼の山車(だし)の一つ。山形の台の上に鉾・なぎなたなどを立てる。特に京都の祇園会(ぎおんえ)のものが有名。)の一つ。竿頭(かんとう)が長刀であるもの。 |
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