木製柱状の蘇民将来符(2)
陸奥国分寺(宮城県仙台市)のものは、長さ2.5cm・径1cmの小型八角形の護符である。頭部と胴部にわけられるが、いずれも各面を赤・青・黄・黒交互に彩色されており、頭部に左回りで梵字と「ソミンソーライ」と記されている。また、中心に穴があけられており赤い紐が通してあり、吊りさげることが出来る。この護符は陸奥国分寺薬師堂から頒布され、疱瘡*1除けの護符として信仰されていた。 道祖神社(宮城県名取市)の御守としての蘇民将来も、八角形で長さ4.9cm径2cmと比較的小型のもので、各面を赤・青と交互に彩色されている。「ソミンショウライ」の文字も上部に各面1字ずつ左回りに書かれているし、中心に穴があけられて白いビニール状のヒモが通されているのも陸奥国分寺例と同様である。 笹野観音(山形県米沢市)のものは、柳の木で作られた、やはり八角形のもので3段の切り込みによって、頭部と胴部がわけられており、その形状はやや末広がりを呈している。長さ10.7cm・底径5cmを計る。頭頂は扁平で、その中央に黒の線書きをした赤色の☆印が描かれている。頭部の各面1字あて横書きで「蘇民将来之子孫也」と記され、切り込み部と胴部上半に青と黄色の縦線の装飾がなされたもので、この地方の民芸品として知られる笹野彫とどこか通ずるものがある。なお、ここでも写真でみるように大小の種類がみられる。東北地方の各地には、このように木製柱状の蘇民将来符がいくつか頒布されていて多いが、このほかの地域のものもみてみよう。
津島神社(愛知県津島市)のものは、その形状も六角形であり信濃国分寺例に最も似ているもので、文様的にも類似しているとみられる。ただ、蘇民将来の文字が右回りで横一列である点が異なる。 八坂神社(京都市東山区)の護符は長さ7.8cm・径5cmを有す八角形のもので、細い沈線によって頭部と胴部がわけられており、頭部には「蘇民将来之子孫也」と各面1字あて左回りに文字が書かれている。胴部は三角状の沈線による文様が施され、赤と緑に塗りわけられている。また写真にみるように文様的にいくつかのデザインがある。いずれも中心部に穴が貫通しており、撚った麻紐が通してあり、吊りさげるようになっている。
祇園神社(兵庫県神戸市)の蘇民御守として頒布されているものは、六角柱状で頭部が尖がり頸部に切り込みを入れ、胴部と区別した形状で、信濃国分寺例と似たものであるが、切り込みの角度や頭部の尖がり具合などが異なる。長さ8cm・径2.5cmの大きさで、「蘇民将来子孫人也家門繁栄」の文字が記されている。 |
*1疱瘡(ほうそう)天然痘(法定伝染病の一種。伝染力がきわめて強く、死亡率も高い。1980年、WHO により絶滅宣言が出された。)の俗称。また、種痘(天然痘を予防するため、痘苗(とうびよう)を人体の皮膚に接種すること。)やそのあとについてもいう。 |
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